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ノルマンディーの親密な緑釉器

 

フランス北西部、ノルマンディー地方内陸カルヴァス近郊より。

19世紀の食料保存器です。

近郊で作陶された工芸品としてはより広く知られたキュノワールの陶器と比べても生産圏が狭く、地域性の濃度を一層つよく感じます。主には酸化銅の特性を活かした緑釉は、日本の織部と似た焼成です。古くは建築用瓦・タイルの製造で知られ、当時、生産の中心だったカルヴァドス地域内の村名をとり「(ル・)プレ・ドージュの陶器」とも呼ばれます。

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田舎的なおおらかさに、特に壺類に関しては、素焼きの肌を残し、釉調はグラデーションになっていることも多く、自由なニュアンスは特徴的。緑釉陶器としてはプロヴァンスのそれと比べて仄かに暗さを感じるのは、陽光の弱さや、それによる木々の色味とも相関があるのだろうと推察します。

決して社交的とは呼べず、雨量も多い土地で暮らすことの困難は当時は一層だっただろうと考えながら、親密に内観へと語りかけるような、そういう静かな無骨さが、個人的にはとても心地よいものでした。

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