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港町ル・アーヴルより、近代地方工芸の妙

 

1790年ごろより製陶業に従事していたというルイ・ドラヴィーニュが、当時フランスで希求されていた英国風陶器の焼成に適した陶土が、ルーアン近郊、ラ・ロンドの森で識者により発見・採集されたことを踏まえて、1800年代初頭頃から、僅か10年間だけノルマンディーの港町ル・アーブルにて製陶した上質な軟質陶器。

地図(Click!

新興の地方窯とはいえ、ルーアン・アカデミーとの協力関係があり、国の支援も受けていたそうで、10年足らずで財政破綻に陥ってしまった経緯は定かではありませんが、写真は、未だファイアンスフィーヌという言葉が一般化する以前に、僅かながら造られた器々のうちの1つです。

背面には「LDELAVIGNE AUHAVRE」の刻印(Click!)が確認できます。

※「Au Havre」の「Au」は、前置詞「À + Le」の縮約形。

窯全体の作風としては、英国のスタイルに倣っていたり、近郊のフォルジュレゾー窯との相似性も感じますが、写真の色絵皿は、他で類例を知らず、解釈を窯独自に昇華し生まれたものだろうと考えています。

手描きのやわらかな牧歌を纏いながら、時代を踏まえると、焼成や装飾の構図は、パリ近郊のそれと比べても安定しており、或いは最先端、英国から距離が近い港町に窯があったことが関係しているだろうか。そんなことも推察します。

フランスにおける近代地方工芸の妙を感じる佳品でした。

 


 

Assiettes, marque au dos “LDELAVIGNE AUHAVRE”
Louis Delavigne au Havre vers 1799-1810

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