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レジニエ、好事家の蒐集品

 

18世紀のフランスより、暗がりにちいさな灯りを投げかけた錬鉄製の燭台は、ろうそくが高価な時代に、火のついたモミや松の木切れを挟み、たいまつのようにして用いることも想定し設計された、古き時代の素朴な生活道具です。

高さを出すことで煙が充満することなく上方に登っていくよう考えられており、主には煙突の裾であったりに添え置き、日常用いられていました。フランスの道具好事家のなかでは、レジニエ(Résinier)の名で親しまれているささやかながらコレクションピースでもあります。

1694年の初版から現代の版まで横断でアカデミー・フランセーズ辞典を調べてみましたが、同語に関して、それと類推できる用法についての記述は見つからず、いつ頃からそのように呼ばれているかは定かでないのですが、樹脂(Résine)が内部に染み込んだ木切れが、火を焚くのに適していたことから転じてついた通称なようです。

幾度かとり扱ってきたなかでも、意匠性を抑えた、殊に削ぎ落とされた造形には心惹かれました。鈍い墨色とざらりとしたマチエールは、ほんのさり気ない捻り装飾を加えて線細く精錬され、渋いながら、静かで上品な佇まいでした。

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