推定14〜15世紀頃、フランス中部ロワール川近郊より、建築床材として用いられた象嵌タイルは、4枚を合わせ並べることで八弁の円花文となります。ローマの時代から建築装飾として好んで採りいれられ続けてきたロゼットモチーフを構成する一片です。
絵付けではなく、木型に入れ乾燥させた胎土に文様判を押して手彫りした後に、胎土とは異なる色土(着色した泥しょう)を埋めこみ施釉焼成した「象嵌技法」で、食器類の陶工とは異なる専門のタイル製造工チュイリエ(Tuilier, ère)によって造られています。
中世の気配は未だありありと。
教会や修道院、或いは貴族階級の邸宅。生活の傍らに在り続けた建築物の切片は、眺めているだけで当時の人々の暮らしへの想像を掻き立てられます。
※クリュニー中世美術館の所蔵品(13世紀頃)より参考写真(Click!)